秋の月は日々戯れに
それでも結果は、参加賞より二つ上のお茶セットだった。
「あともう一つ上にいけたら、旬のお野菜か果物かどちらかの詰め合わせが貰えたんですけどね」
「福引きなんて、狙って当てられるもんでもないでしょ」
チンっと軽快な音がして、電子レンジから彼女が取り出したカップからは、ホカホカと湯気が立ち上っている。
「それもそうですね。どちらにしても、参加賞よりいいものが貰えたんですから、これは充分ラッキーです」
彼女からカップを受け取った彼は、そっと息を吹きかけて湯気を散らすと、火傷に気をつけながら少しずつ口に含む。
肉じゃが一色だった口の中を、すっきりとした緑茶の苦味が駆け抜けた。
「楽しい飲み会になるといいですね」
唐突に彼女はそう言って、胃腸薬の袋を両手でずいっと彼の方に押しやる。
「これは、お守りです」
青白い手によって目の前に届けられた胃腸薬を、彼はしばらくジッと見つめる。
「これからは、飲み会やご飯のお誘いも増えると思います。だから、毎日持ち歩くのがいいですよ」