秋の月は日々戯れに
観念するつもりが毛頭ない彼は、ひとまず彼女の存在を意識の外に追いやって、ベッドの上の後輩を、このあとどうするか考える。
どうするもこうするも、先ほど店とタクシーの中で何をしても起きなかった事を考えれば、今日はここに泊めるしかない。
でもそうなると
「シングルベッドに男二人……」
口に出してみると、頭の中で考えていた時よりずっと憂鬱な気持ちになる。
でも、それしか方法がない以上仕方がない。
ソファーでもあれば、一晩くらいそこで寝ても構わないのだが、残念ながらこの部屋にそんなものは存在しない。
「……何をしているんですか?」
彼は、眠りこける後輩を押したり引っ張ったり転がしたりしながら、何とかその体をベッドの端へと寄せていく。
「しょうがないでしょ、他に寝る場所がないんです。夏だったらこいつを床に転がしといても良かったんですけど、今の季節にそれはシャレにならない事になりますから」
シングルベッドに男二人も中々シャレにならないが、一晩だけだと思えば耐えるしかない。