秋の月は日々戯れに
彼の言い分に、彼女はちっとも納得できないようでまだ首を傾げている。
それを無視してさっさと布団を敷いた彼は、再びベッドに戻ってもう一度後輩の体を動かしにかかる。
中々思うような位置まで動かない後輩にしびれを切らして、彼は掴んだ掛布を思いっきり上に持ち上げた。
その拍子に後輩の体がころんと転がって、勢い余って壁にぶつかる音がしたが、おかげでようやく彼が潜り込めるほどのスペースが空いた。
「……ちょっと乱暴すぎじゃありませんか?壁にぶつかっていましたよ」
「全ては起きないこいつが悪いんです」
後輩のことよりむしろ、お隣さんに申し訳ない気持ちになる。
彼は心の中で、壁の向こうのお隣さんに謝罪した。
「……でも、やはりおかしくはないでしょうか。眠る必要のないわたしが布団を使うというのは」
「あなたと後輩が、夜中に風呂場で鉢合わせるという万が一を防ぐためです。別におかしくはありません」
「でも……」
どうにも納得できない様子の彼女の言葉を遮るように、彼はベッドの上に何とか作り出したスペースに体を滑り込ませる。