秋の月は日々戯れに


――やはり、シングルベッドに男二人は狭い。


「電気、忘れないで消してくださいね」


それでも、そんな感情を彼女に悟らせないように、彼は布団を被って目を閉じた。

後輩が体を動かすたびに、腕や足が背中にあたって、知らず知らずのうちに彼はベッドの端へと押しやられていく。

狭苦しさと、背中に感じるアルコールに高められた体温、嗅ぎなれない他人の匂いと、時々うわ言のように紡がれる誰かの名前のせいで、中々眠気がやってこない。

その間にも、後輩はどんどん領地を広げていく。


「こいつ……少しは遠慮ってものを」


もう一度壁際に押しやってやろうと振り返ると、突然片腕がひやっとしたものに包まれて、彼の全身に鳥肌が立った。

ついでにビックリしすぎて「うひっ!?」とおかしな声が出る。

首を捻って腕を見ると、そこには見覚えのある青白いもの。


「……何してるんですか」


布団から顔を出して確認すると、ベッド脇にしゃがんだ彼女が彼の腕を掴んでいた。
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