秋の月は日々戯れに


「何をしているかと言われたら、あなたの腕を掴んでいます」


掴んだ腕をジッと見つめて答える彼女に、僅かな沈黙を挟んで彼はまた口を開く。


「じゃあ、なんで腕を掴んでるんですか。冷たいので離してください。あと、ビックリするので不意打ちはやめてください」

「聞いたことない変な声、出ていましたもんね」


なんだかバカにされているような気がしてムスっと彼女を睨むと、ジッと腕を見つめていた視線がおずおずと上を向いた。

目が合うと、彼女の口元が何か言いたげに動く。


「なんですか」

「察してください」


何も言わず、何か言いたげなこの雰囲気だけで、言いたいことを察しろと彼女は言う。


「無理ですね。できれば言葉にしてください。俺、エスパーじゃないので」


にべもなく返したら、彼女は少しだけ頬を膨らませて「少しは考えてくれても……」とブツブツ言いながら、また掴んだ腕に視線を落とした。


「……しょに、…………てくだ……い」

「はい?」


全くもって意味のある言葉が聞き取れなかった。
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