秋の月は日々戯れに
聞き返しても彼女は顔を上げなくて、掴んだ腕を見つめたままでまた口を開く。
「だから、……い、いっしょに…………て、ください」
「すみません。もう一回」
先ほどよりは幾分聞き取れたが、それでも意味が分からなくてまた聞き返したら、彼女は不機嫌なのか困っているのか恥ずかしいのかなんなのか微妙に判別しづらい表情で、彼を見上げた。
少し必死さが伺えるその顔は、どこか睨んでいるようにも見える。
「何度も何度も言わせないでください!あなたはやっぱり性格がよろしくないですね」
彼女があげた大声に、ベッドの上で後輩が僅かに身じろぐ。
けれど、目が覚める気配はない。
「わたしは、一緒に寝てくださいと言いました!男とはいえ、あなたが誰かと添い寝しているなんて、妻としていい気分ではありません。それに、ベッドの上よりこちらの布団の方が広いです!」
「……はい?」
今度は最初から最後までしっかりと聞き取れたが、なんだかよく分からなくてとりあえず疑問符を返すと、彼女は不機嫌全開でリスみたいに膨れた。