秋の月は日々戯れに
「いいから、こっちに来てください!」
力加減が難しいと言っていた彼女に勢いよく腕を引かれて、ベッドの端まで押しやられていた彼は、バランスを崩して転がり落ちる。
「おわっ!?」
ベッドから落ちた彼を問答無用で引き寄せた彼女は、素早く電気を消しに行くと、また素早く戻ってきて彼の隣に横になった。
「わたし一人で布団を使うのは罪悪感がありますが、これならば問題ないです。それにこれこそ、本来夫婦としてあるべき姿です」
「……いや、それは」
「というわけでおやすみなさい」
有無を言わせず、彼女は話をぶった切って背中を向ける。
それを、彼は腑に落ちない様子でジッと見つめていた。
これが本来夫婦のあるべき姿だとは言いながらも、彼女はできる限り端に寄って彼との距離を開けようとしている。
――わたしのせいであなたに朝が来ないなんて、そんなの絶対に嫌ですから
自分が隣にいると、ベッドまで揺らしそうな勢いでガタガタと震える彼を懸念して、毎夜風呂場にこもっていた彼女が、今日は隣にいる。