秋の月は日々戯れに
納得はしなくとも、彼の意向を汲んではくれたのだろう。
それでもやっぱり心配だから、自分のせいで彼の命が危険に晒されるのは怖いから、精一杯に距離を開けて――。
そんな白いワンピースの後ろ姿をしばらく見つめていた彼は、不意に襲ってきた眠気に大きくあくびをした。
彼女に背を向けるようにして、彼もできる限り布団の端に寄る。
こちらもサイズは確かシングルなはずなのだが、不思議とベッドにいた時程の狭苦しさは感じない。
背中に感じる熱もなく、古い布団の匂い以外もしなければ、呼吸をする音さえ聞こえない。
その静寂の中で目を閉じると、ずっしりとまぶたが重たくなってきた。
抗いがたいその重みに、素直に従って目を閉じる。
やがて彼は、安らかな眠りへと落ちていった。
しばらくしてそっと振り返った彼女は、規則正しく動く背中を見つめ、彼がすっかり寝入ったのを確認してからこっそりと起き上がる。
幽霊であるから、物音を立てようと思っても立てられないのだけれど、何となくそろりそろりと足音を忍ばせるように頭の方に回ってしゃがみ込み、彼の寝顔を眺めた。