秋の月は日々戯れに
もちろん、近づきすぎると彼の体が寒さに震えてしまうから、布団の端により気味で。
幽霊だから眠ることはできないけれど、それでも目を閉じて、夢を見る代わりに幸せな想像で脳内を満たす。
時折目を開けて隣を見ると、手を伸ばせば届く距離に彼の背中があって、見ていればつい触れたくなる。
でもグッと堪えて眺めていると、不意にベッドの上で布団がもぞもぞと動いて、唐突にそれがむくっと盛り上がった。
思わずビクッと肩を揺らした彼女の前で、起き上がった後輩はキョロキョロと辺りを見回すと、徐ろにベッドから足を下ろす。
「あっ……」と彼女が上げた声は小さすぎて誰にも届かず、後輩が下ろした足はそのまま、全体重でもって下にあった彼の足を踏みつけた。
「いっ!!?」
「うわあ!!」
彼が起き上がった拍子に、後輩はバランスを崩してベッドにひっくり返り、咄嗟に電気を点けようと立ち上がった彼女を見て、また後輩がビックリしたような声をあげる。
穏やかで静かだった夜は、一瞬にして騒がしく変わった。