秋の月は日々戯れに
若干引き気味に、もしくは逆にひどく心配そうに「先輩、疲れてるんじゃないっすか?」なんて言われるのが容易に想像できる。
未だに誤解の解けていない受付嬢と、彼女を妻だと信じて疑わない同僚にこの後輩も加えた三人は、彼の中で幾分諦めの境地に突入しつつあった。
「外……かな」
「この寒いのに外っすか!?」
ポツリと呟いた言葉に、後輩は当然のように驚く。
いくら雪が降っていないとは言え、この冬のさなかに外で弁当を食べようなんてもの好きは、きっと彼を置いて他にいない。
けれど彼には、そうするしかない理由がある。
「ずっと建物の中にいると息が詰まるだろ。だから昼飯の時くらい、外の空気を吸おうかな、と……」
自分で言っていて、なんて嘘くさいんだと思った。
思ったけれど、今はこれ以上の理由が思いつかない。
「だからお前は、俺のことは気にせずどこか温かいところでお昼を」
「やっぱり先輩クラスになると、考え方が違うんすね。オレも、お供します!」
やんわりと一緒にお昼を食べることを断ろうとした彼だったが、その言葉を遮って後輩が目をキラキラさせて宣言する。