秋の月は日々戯れに
「いやあ、やっぱ寒いっすね。でも何かこう……頭が冴え渡る気がします!午後の仕事にいい影響をもたらしそうな」
「……それは良かったな」
自動販売機で買ったお茶を二本と、コンビニ袋をぶら下げてやって来た後輩は、白い息を吐きだしながらもどこか嬉しそうに笑った。
二人がいるのは、会社の裏手にあるベンチ。
面しているのが大通りではないため、人通りもめったになく、夏場などは道沿いに植えられた木に茂った葉のおかげで、後ろにそびえ立つ建物からもいい目隠しになる場所。
葉がすっかり落ちたこの季節は、代わりに枝に積もった雪がその目隠し効果を若干ではあるが持続してくれていた。
もちろんベンチにも薄らと積もっていた雪を手で払い除けてから、彼は冷たいそこに腰を下ろす。
一瞬、お尻から伝わってくる冷たさに体がブルっと大きく震えた。
隣を見れば、後輩も同じようにベンチに腰を下ろした瞬間に体を震わせている。
「大丈夫か?無理して風邪引かれても困るから、中に戻っても……」
「平気っすよ!オレ、昔から体丈夫なんで」