秋の月は日々戯れに


「オレも、彼女の手作り弁当食べたいな……」


羨ましそうにぼやきながら、後輩はガサゴソとコンビニ袋をあさって、ツナマヨのおにぎりを取り出した。


「彼女、付き合い始めの頃は料理が苦手だって言ってたんすよ。だから、手料理とか絶対食べさせてくれなかったのに、半年くらい経った頃からかな……急に色々作ってくれるようになって。それも、オレの好きなものばっかり!」


おにぎりを包むフィルムを剥がして海苔を巻きつけながら、後輩が嬉しそうに語る。

自分の彼女の話をしている時の後輩は本当に幸せそうで、それが彼には少し眩しい。


「オレの為に、練習して苦手を克服してくれたんだろうなって思ったら、もう可愛くてたまんないっすよね。その時改めて、好きだなって、一生大事にしたいなって思ったんすよ」


幸せそうに頬を緩めてへへっと笑った後輩は、顔を上げて彼に視線を合わせる。


「先輩は、奥さんのどんなところが好きっすか?どこに惚れて、付き合おうって、結婚しようって思ったんすか?」


前のめり気味な後輩に押される形で若干身を引いた彼は、その質問に困り果てる。
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