秋の月は日々戯れに


「こんな変な感じですけど、見捨てないであげてくださいね。これでも一応いい大学出ているので、人並み以上に仕事はできるはずですから」


彼に向かってそう言った受付嬢に、後輩がすかさず反論する。


「“こんな感じ”とか“これでも”ってなんだよ」

「必要だったからつけただけだよ。頭いいのに、ちゃんと敬語使わないから凄くバカっぽく見えるし」

「それとこれとは関係ないだろ!」

「あるよ。バカっぽいけど、ぽいだけでバカではありませんってことを伝えるために、“こんな感じ”と“これでも”が必要なんだから」


そんな調子で言い合う二人の姿に、置いてけぼりをくらった彼は、キョトンとしてその様子を眺める。

二人が挨拶を交わしている姿はこれまでにも何度か見かけたことがあるし、笑い合って何か楽しそうに話をしていたこともあったけれど、まさかここまで親しげに言い合う程の仲だったとは知らなかった。

友達、と言うよりもっと親密な空気が、二人からは醸し出されている。

なるほどそういうことか、と彼は一人で納得した。

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