秋の月は日々戯れに
会社の顔にして男性社員の密かなる癒しともなれば、想いを寄せている人も少なくはないだろう。
後輩が心配になるわけが彼にも分かった。
「仲がいいんだな。俺、知らなかったよ」
二人が付き合っているだなんて――という部分は、心の中で付け足す。
可愛らしい受付嬢と、中身はヘタレであるらしいが見た目は今時男子な後輩は、並ぶと確かにお似合いのカップルだ。
自分と彼女のような不自然さのない、自然で健全なカップル――。
「仲がいいなんて、改めて言われるとなんだか恥ずかしいです……」
「恥ずかしいとか言うな!こっちまで恥ずかしくなる……」
「いや、私の方が断然恥ずかしいから大丈夫」
「“大丈夫”ってなんだよ!!オレのがもっと恥ずかしいわ!」
また二人で仲良くじゃれ合い始めたのを眺めながら、彼は弁当箱に戻した玉子焼きをもう一度掴み上げる。
一口齧ってみると、予想通りの微妙な味がした。
しょっぱいというか、甘いというか、なんというか……本当に絶妙なところをついてくる。
もちろん、いい意味ではない。
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