秋の月は日々戯れに
「あっ、おかえりなさい!」
「……これは、どういうことですか」
家に帰った彼が目にしたのは、いつも通りに笑顔で出迎える彼女と、そこにいるはずのない人物。
「なんでいるんだよ」
バツが悪そうに俯いていた同僚は、その声に恐る恐る顔を上げた。
「……おかえり。あと、お邪魔してます」
へへっと笑ってみせる同僚を、彼は鋭く睨みつける。
「確かインフルエンザだったよな。それでしばらく休むついでに有給消化中で、その間の仕事は俺が代わりにやってるはずなのに、なんでここにいるんだ」
冷たく同僚を見据えたまま、彼はつらつらと事実を並べ立てる。
「いや、あの……その件につきましては、その……なんと言いますか。別に嘘ではない……というか、仮病という訳ではなくて。えっと、つまり……」
煮え切らない態度でもごもごと口を動かす同僚は、自分を睨みつける彼からそっと視線を外してまた俯く。
しばらく、仁王立ちの彼に睨みつけられて縮こまる同僚という光景が続くと、横から彼女がその空気を変えるように口を開いた。