秋の月は日々戯れに


「なっ……」

「あっ!おかえりなさい」


ビックリしすぎて声も出ない彼を、彼女は大変嬉しそうな笑顔で迎える。


「なっ……あっ……」


意味不明な単語しか出てこない彼を、彼女はますますの笑顔で見つめる。

驚愕で目を見開く彼と、不自然な程の笑顔を浮かべる彼女。

持っていた鞄をぼとっと床に落とした彼は、笑顔の彼女を睨みつけて、ビシッとキッチンスペースを指差した。


「何ですか!!これは」


ようやく出てきたまともな声は、怒りと共に彼女へと向かう。

不自然な程の笑顔には今にも冷や汗が滲みそうで、幽霊だから本当に汗をかいたりはしないけれど、そんな雰囲気漂う彼女は、そうっと視線を外して明後日の方を向いた。


「何をどうしたらこんなことになるのか、説明してください!!」


朝出て行った時は、いつも通りに自炊の痕跡が見られない綺麗に片付いたキッチンが、今では悲惨なほどにごちゃごちゃしていて目も当てられない。

まるで、そこだけ泥棒が荒らしていったかのようだ。

または、そこだけ嵐が通り過ぎたかのよう。
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