秋の月は日々戯れに

それなのにこの幽霊は、どうしてか関わらせようとする。

知らないフリをしたって通用しない。


「浮気の定義は人それぞれだと思うのですが、ちなみにあなたはどこからを浮気だと捉えますか?」


唐突な質問に、彼は「はい?」と隣に視線を移す。


「わたしとしては、異性と二人きりでプライベートなお出かけをしている時点で、浮気を疑いたいところなのですが。あなたはどうですか?」


そんなこと考えたこともなかったので咄嗟に言葉に詰まるが、彼女はきっと答えを聞くまでこの話題から離れる気はないのだろうから、彼は考える。

自分が思う浮気の定義について、浮気を疑いたくなる場面について、考える。


「手を繋いで一緒に歩いていたら……とかですかね」


なるほどなるほど、と彼女は頷いた。


「では、二人きりで一緒にランチはどうですか?ちなみに、ランチの最中は手を繋いでいません」


そんなこと言われずとも分かっているが、とりあえずその状況について、自分がどう思うかを考えてみる。
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