秋の月は日々戯れに

ブランコからふわりと地面に降り立った足は、透けているせいで宙に浮かんでいるようにも見える。


「それに、こんなに波長がピッタリ合う方は初めてです。これは、とっても嬉しい出会いです」


立ち尽くす彼を見つめて、彼女が嬉しそうに笑う。


「秋の月と書いて、秋月(あきづき)です」


自分の胸を指し示した彼女に、しばらくして彼は、それが名前なのだと気がついた。

スッと動いた視線に釣られて顔を上げると、雲の切れ間から月が顔を出していくのが見える。

満月にはまだ届かない、微妙にかけた歪な月。

ぼんやりと見上げていたら、唐突にふふっと笑う声が聞こえた。

下ろした視線の先、月光に照らされてますます透き通る彼女の足元と、際立つ肌の青白さ。

生き物の温かさをまるで感じないのに、不思議と怖いとは思わなかった。

ふわりふわりとまるで宙を漂うように歩いてきた彼女は、手を伸ばせばギリギリ触れられるかどうか、そんな微妙な距離で立ち止まる。


「改めまして、こんばんは」


腿の上に両手を揃えて、とても丁寧に頭を下げた彼女は、顔を上げると同時ににっこり笑った。


「今日からとり憑かせて頂きます。不束者ですが、どうか末永くよろしくお願い致します」

「…………はい?」


秋も終わりに近づいたある日、週間天気予報に雪マークが現れ始めた、寒々しい風が吹く夜のこと。

これが、彼と彼女の出会い。
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