秋の月は日々戯れに

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彼と彼女と受付嬢の話１

――私の知らないところで、大変な事が起きている……。


メッセージアプリの受信音を聞いて鞄からスマートフォンを取り出した受付嬢は、その画面を凝視して驚愕していた。

時刻は丁度いいおやつ時、若い女性が好みそうなおしゃれなカフェで、ホットのココアをお供にのんびりした休日を楽しんでいたはずなのに、届けられたメッセージによって、その和やかな空気が一瞬で霧散する。

残っていたココアを急いで飲み干してコートを羽織り、伝票と鞄を手に席を立つ。

レジでお会計を済ませて店を出ると、感じた温度差に思わず首が縮まった。

けれど、そんなことをしている場合ではないと思い至って、すぐさま握り締めたままだったスマートフォンから電話をかける。

中々繋がらない電話にじりじりしていると、ようやく「……へー？」と随分気の抜けた声が聞こえた。


「あっ、もしもし！」


勢い込んで声を返すと、電話の向こうはしばらく無言。

それでも構わず


「メッセージ読んだけど、とりあえずどうしてそんなことになっているのか説明して！今からそっちに行くから、もし出かけているならすぐ家に戻って」