秋の月は日々戯れに

指定されたバス停に受付嬢が降り立つと、そこにはすでに迎えの姿があった。

酷くぐったりした顔の彼と、その隣に並んで立つ白いワンピースの彼女。


「お休みのところ、わざわざすみません。あっ!もしかして、奥様ですか?わざわざお二人で来てくれたんですか!」


嬉しそうに駆け寄ってくる受付嬢に、さっきまでほんの少しむくれていた彼女の顔が、一瞬で笑顔に変わる。


「お久しぶりです。お弁当を届けに行ったとき以来ですね」

「そうですね、お久しぶりです!またお会い出来て嬉しいです」


休日といえども、受付嬢の笑顔は仕事中と変わらない眩しさがある。

むしろ、休日という開放感からか、眩しさに拍車がかかっているくらい。

その笑顔から隣の彼に視線を移した彼女は「聞きました?“奥様”ですって。いい響きですね」と嬉しそうに囁いた。

ここに来るまで「あの笑顔の素敵な受付嬢さんをお迎えに行く!?何ですかそれは!堂々とした浮気宣言ですか!!」と怒りまくっていたのと同じ人とは思えない。
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