秋の月は日々戯れに
すでにぐったりと疲れきってしまっている彼は、もう突っ込むのも面倒くさくて「それは良かったですね」と気のない返事。
囁きあう二人をにこにこ笑って眺めていた受付嬢は、そこでハッとしたように口を開いた。
「あれ、お二人でいらしたということは、今ご自宅には……」
同時に受付嬢の方を向いた二人、彼女は何も言わずに笑みを浮かべていて、彼の方は深々としたため息を零す。
「今家には、あいつが一人でいる。数えるのも疲れたから今日で何日目になるか分からんが……もうずっと家にいる」
泣きながら飛びついてきた後輩を仕方なく家にあげて以来、自分の家に帰る気力が湧かないなどと抜かす後輩を、彼は渋々家に置いていた。
「……なんだかわけが分からないことになってて、俺じゃあもう手に負えないんだ。何とかしてくれ」
心の底から願う彼に、隣の彼女はやっぱり笑顔のまま。
受付嬢は、なんだかアンバランスな二人を交互に見つめて、ひとまず彼に視線を固定した。