秋の月は日々戯れに
「大変なことになっているのは、私もついさっき知ったんですけど……。一体、何がどうしてこんなことになってしまったんですか?」
受付嬢の問いかけに、彼は困ったように唸りながらガシガシと頭をかく。
「どうしてこんなことになってるのかは俺も知りたいとこだけど、あいつが言うには、浮気がどうしたこうしたって……」
「ひとまず、家に行こう」と彼が歩き出すと、彼女も黙ってそれに続く。
受付嬢もまた、置いていかれないように二人のあとを追った。
並んで立つ二人は受付嬢から見て仲睦まじい夫婦そのもので、見ているとこんな時なのに心がほっこりしてくる。
ほっこりしている場合でないことくらい分かっているが、それでも受付嬢はにこにこ笑って、先を行く二人の背中を見つめた。
ただ一つ気になっていることがあるとすれば、それは彼女が、この寒空にコートも羽織らずワンピース一枚で平然としている事。
「……凄いな。確か今日は、最高気温もマイナスがついていたと思ったんだけど」