秋の月は日々戯れに
ぽそっと呟いた声と一緒に、吐き出された息が白く濁る。
マフラーもコートも手袋も装備して、それでもむき出しの顔が寒くて堪らない受付嬢は、尊敬の眼差しで彼女の白い背中を見つめる。
その視線に気がついたのか、不意に振り返った彼女はニコッと笑ってから、隣の彼に飛びつくようにして腕を絡めた。
「ちょっ!?何するんですか!」
「正妻アピールです」
「わけ分かんないこと言ってないで、離してください」
後ろの受付嬢を気にして、何とか彼女を引き離そうとする彼。
けれど、その白すぎる腕に触れるのは未だに躊躇してしまうから、それをいいことに彼女は更にギュッと彼の腕にしがみつく。
「ガタガタ震えていたらカッコ悪いですよ?こんな時くらい男を見せてください」
「あなたが離れてくれたら震えませんよ!」
チラッと彼が後ろを伺うと、目が合った受付嬢は「私のことはお構いなく!どうぞ続けてください」などと言う。
それを聞いた彼女はにっこり笑って
「受付嬢さんは、笑顔だけでなく性格も素敵な方ですね」