秋の月は日々戯れに
まるで、叱られている時の犬のようだ。
しょげて垂れた耳と尻尾が見えるような気さえする。
「それで、どうやって弁当を作ったんですか」
視線と同じに声も厳しく問いただすと、彼女がおずおずと口を開く。
「直接触れはしませんが、動かすことくらいはできますので」
なんだかよく分からない返答に、ん?と思わず眉間に皺が寄る。
「幽霊であるわたしには、ポルターガイストという秘技があります!」
先程までのしょげっぷりはどこへやら、彼女は突然胸を張って、とても得意げにそう言い放った。
「でも、作って届けに行くまでで力尽きてしまいまして。帰って来てから片付ける気力が……その…………」
湧かなかったというわけか。
思わず深々とため息をついたら、彼女の肩がピクっと揺れた。
上目遣いの視線が心なしかビクついている。
「で、でもあの!ちょっと休憩したら片付けようと思っていたんです。本当です!わたしは決して、片付けられない女ではありません」
わたわたと必死になって弁解する彼女は、先程まで力なく床にぺったりと座り込んでいたのに、突然すっくと立ち上がってキッチンの前に立つ。