秋の月は日々戯れに
まさか、これからポルターガイストを披露しようというのだろうか。
なんだかとっても嫌な予感がして、むむっと眉間に皺を寄せた彼女とキッチンとの間に入り込む。
これで遮れているかどうかは微妙だが、彼女の表情は変わった。
「これ以上の大惨事はお断りです。俺が片付けますから、あなたは何もしないでください」
「えっ、でも……」と食い下がる彼女を無視して、落とした鞄を拾いながらベッドに向かうと、そこに鞄も上着もネクタイも、片付けに邪魔になりそうなものはどんどん放っていく。
ワイシャツ姿で腕をまくれば流石に寒いので、エアコンのスイッチを入れてからキッチンに戻る。
ひとまず床に落ちていた菜箸を拾ってこびりついた卵液を拭き取ると、フライパンもボウルも汚れ物は全てシンクにぶち込む。
洗い物は後回しにして作業台に撒き散らされた調味料を片付けていると、横から恐る恐るといった様子で彼女が顔を出した。
「それであの……受け取ってもらえましたか?お弁当」