秋の月は日々戯れに


「あなたの妻であることを強く主張します!!」


ぞわっと全身に鳥肌が立って体が震え、腰の辺りが氷を押し付けられているように冷たくなる。

エアコンが効いて部屋は温まっているはずなのに、腰周りだけが異様に寒い。

離してくださいと言いたくて見下ろした先、彼女はほんの少し怒ったような顔で彼を見上げていた。


「やかんの次は、笑顔の素敵なあの受付の方ですか。わたしにはないあの健康的さに惹かれたというわけですか!でも絶対ダメです。浮気は許しませんし、正妻の座も譲りません!!」


また意味の分からないことをと思ったが、彼女は真剣な顔をして怒っている。

ついさっきまで、しょげかえっていたのと同じ人物とは思えない変わりようだ。

この様子では、やはり無理やり引き剥がすしかないかと思ったが、伸ばした手はやっぱり触れる前に躊躇して止まる。

その白すぎる肌は、何となく触るのが怖かった。

その間にも、じわりじわりと腰から冷たさが広がっていって、ゾワゾワと背筋が粟立ち鳥肌が止まらない。
< 25 / 399 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop