秋の月は日々戯れに
皿を手に振り返った彼女が高らかに宣言すると、同僚を見つめていた受付嬢の視線と、気まずげに逸らされていた同僚の視線が、一斉に彼女へと集まる。
「さあ、いただきましょう!同僚さんも、座ってください」
本当は今すぐにでも帰ってしまいたいのだろうが、笑顔で促す彼女に押し負ける形で、同僚もようやく腰を下ろす。
そして座って早々
「……この嘘つき」
彼に向かってボソッと恨み言を漏らした。
「嘘なんてついてないだろ。俺は“夕飯を食べに来ないか”としか言ってない」
「それはそうだけど……。他にも誰かいるなら、教えてくれても良かったじゃん」
「教えたら、お前来なかっただろ」
ムスっと黙り込んだところをみると、図星らしい。
「あっきー、こいつって性悪だよね」
苛立ち紛れにビシッと顔面を指さされて彼が顔をしかめると、カレーの皿を配り終えた彼女が、座りながらクスッと笑った。
「性格が、ちょっぴり宜しくないだけですよ」
「似たようなもんじゃないですか」
不機嫌そうに言い返した彼に、彼女は素知らぬ顔でスプーンを手渡す。
受け取ってからもしばらくムスっと黙り込んでいたが、全員の視線が何かを待っているように自分を見ていることに気づいて、彼は仕方なく不機嫌さを振り切って手を合わせた。
「いただきます」
彼に続くようにして、他の二人もそれぞれに「いただきます」とスプーンを手に取る。