秋の月は日々戯れに
その映像を振り切るように寝返りを打ってみるが、結局どこを向いても暗いのは変わらないから、しばらくするとまた彼女の顔が浮かんでくる。
一つ、大きく息を吐いて、彼は布団を跳ね除けるようにして身を起こした。
まだ部屋は温まりきっていないから震えるほど寒いけれど、ベッドの中で延々と彼女の顔を思い浮かべているよりはずっとマシだ。
ひとまず洗面所で顔を洗って、寝ぼけた脳を覚醒させる。
顔を上げると鏡が見えて、久しぶりにまじまじと見た自分の顔は、記憶していたものよりだいぶやつれていた。
なんだかちょっぴり老けても見える。
「あー……あの幽霊のせいで、俺の生気が」
そんな風にぼやいてみるけれど、やつれた理由が別にあることくらい彼も分かっている。
分かっているけれど認めたくはないから、そんな風にぼやいてみる。
もう一度凍えるほど冷たい水を二、三度顔に当ててから、彼はタオルを掴んで洗面所を出た。
部屋に戻ると、そこはもうだいぶ温かくなっていて、ピーンっと突っ張ったような顔の筋肉も次第に和らいでいく。
真っ直ぐにキッチンスペースに向かった彼は、水を入れたやかんを火にかけると、カップを取り出してそこにインスタントのコーヒーを入れる。