秋の月は日々戯れに


「お前……大丈夫か?最近やたらとミスが多いぞ。今までこんなことなかったのに。体調でも悪いのか?」


特別いいというわけでもないが、かと言って悪いわけでもない。

強いて言うなら、食欲がないのと、眠れないくらいのものなので、彼は「そんなことはありません」と答えて曖昧に笑った。


「何か、悩み事か?おれでよければいつでも聞くぞ」


上司からの申し出はありがたかったが、一緒に暮らしていた幽霊が突然いなくなってしまったなんて、とても相談できるようなことではないし、言ったところで信じてもらえるとも思えない。


「何かあったら、いつでも遠慮せず言えよ」


未だ心配そうな表情は消えないまま、労うように肩を叩いて、上司が背を向ける。

まだ辺りに漂っている煙草の匂いを振り切るように椅子を回してパソコンに向き直ると、彼は霧散しそうな集中力をかき集めてキーボードを叩く。

しばらくそうしていると、今度は先ほどの上司より控えめに肩を叩かれた。

叩かれたというよりは、指先でつつかれたような感じだったけれど。
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