秋の月は日々戯れに

反応したら負けだ、そうだ、ここはとことん無視を決め込むしかない。


「わたしを怒らせてそんなに楽しいですか!わたしこれでも、怒ったら怖いんですよ」


しつこくて段々イライラしてきた。

大体、怒らなくたって彼女の存在自体が本当なら相当怖い。

そこに恐怖を感じない彼も彼だが、彼女のしつこさも相当だ。


「素直に謝らなかったこと、絶対に後悔しますからね!」


インスタントのコーヒー程度では、そのしつこさを誤魔化しきれなくなってきて、イライラも耐えられる限界に向かって募っていく。


「いいんですか、本当に後悔しますよ!本当ですよ!!」


しばらくしてついに我慢の限界を迎えた彼は、半ば煽るようにコーヒーを飲み干して乱暴にテーブルにカップを置いたところで、苛立ち全開の顔を彼女へと向けた。

迎え撃つ彼女の顔も相当な怒りをあらわにしていたが、彼がそれに怯むわけもなく、イライラが爆発した第一声で「煩いんですよ!!」と半ば怒鳴りつけるようにして言い放つ。

事の発端、全ての始まりは、昨日の仕事終わりへと遡る――――。






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