秋の月は日々戯れに
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夢を見た。
白無垢を着た綺麗な女性が、丁寧に頭を下げて「不束者ですが、どうか末永くよろしくお願いします」などと言う夢を。
意識が浮上しそうな気配を感じながら、寝返りを打って薄目を開けると、そこに夢で見たのとよく似た顔がすやすやと寝息を立てていた。
しばらくの沈黙の後にゆらりと体を起こし、目を擦ってからもう一度隣に視線を戻す。
やっぱりいる――けれど、流石に白無垢は着ていない。
身につけているのは白いワンピースで、そこから伸びた腕はとても白い。
はっきり言って、白いを通り越して青白い。
しばらくぼんやりと安らかな寝顔を眺めていたら、不意に彼女がパッチリと目を開けた。
まるで、寝ていたのではなく、寝たふりをしていただけだったように。
そして、いたずらっぽくふふっと笑う。
「妻の寝顔に見惚れてしまいましたか。朝ですからね、フレンチなものでよければ受け付けますよ」
楽しげに笑って目を瞑る彼女に、何を要求しているのか分かったから、一つため息を零して早々とベッドから下りる。