秋の月は日々戯れに

それを、頭の中に繰り返し思い浮かべる。

忘れないように、何度も何度も繰り返し――。

探しに行きばいいのだろうかという気持ちと、探してどうなるという気持ちが、彼の中をぐるぐると回り続ける。

所詮彼女は幽霊だ。どんなに妻を名乗っていようと、幽霊であることに変わりはない――。

もしかしたらもう、成仏してしまったのかもしれない彼女を、探し出そうなんて馬鹿げている。

けれどそう考えれば考えるほどに、彼女はまだどこかにいる、という確信めいた相反する気持ちも湧いてくる。

分からない。どうしたらいいのかが分からない――――どうしたいのかが、分からない。

いや、本当は分かっているけれど……――――。

考えすぎて、なんだか頭がガンガンする。

でも、考えずにはいられない。

体も心も疲れきっているのに、眠気はとんでもなく遠いところにあって、近づいてきてくれる気配はない。

それでもひとまず、目だけは閉じる。

眠れないときは、目を閉じて横になっているだけでもいいのだと、何かの本か、もしくはテレビで見たような気がするから――。

窓の外では、全てを覆い隠すように、雪がしんしんと降り続けていた。
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