秋の月は日々戯れに
「ところで、今日あっきーは?一人で買い物なんて珍しいね」
「いつでも一緒と思うなよ」
「いつでも一緒でしょ。照れるな、照れるな」
にやにや笑う同僚の顔が無性に腹立たしくて、彼は足早に歩き出す。
そんな彼の態度など全く頓着せず、同僚も歩調を早めて隣に並んだ。
「それで、今日は何を買いに来たの?」
「なんでもいいだろ。プライバシー」
「侵害してるって言いたいわけ?嫌だね、小さい男は」
やれやれと大げさなほどのため息をついた同僚だが、さして興味もなかったのか、話題はすぐに別のものへと移る。
特に意味なんてない会話をポツポツと交わしながら、自然と二人は連れ立って店内を歩いた。
「あれ、今日土曜だから卵安いんじゃない?」
「お前、この長距離を卵持って帰るのか……?」
朝食用にと、ウィンナーやプチトマトをカゴに入れ、なんやかんやと迷った末に、結局同僚は卵も手に取る。
「うちの玉子焼きね、真ん中にカニカマが入ってるのが定番なんだ」
「うちは昔から玉子焼きは甘かった」
「あー、なんかそんな感じする。甘い玉子焼きを食べて育った顔」
「……どんな顔だよ」