秋の月は日々戯れに
彼の突っ込みに、ふふっと可笑しそうに笑った同僚は、不意に彼の方を向いて足を止める。
「……なんだ?」
嫌な予感がして彼がぶっきらぼうに問いかけると、同僚はにっこり笑って
「あたしの代わりに、たっくんにメッセージ送って」
「……はあ?」
なんで俺が、と言いかけた言葉は、続く同僚の声に遮られる。
「あたしは、今たっくんと距離を置いてるの知ってるでしょ。それなのに気軽に連絡とったら、距離置いてる意味ないじゃん。でもあんたの言った通り、勘違いされたら激しく困る。だから」
自分の代わりに、この状況を伝えて欲しいという同僚に、彼は渋々ながらも応じてスマートフォンを取り出す。
彼としても、また別の角度から二人の問題に巻き込まれるのはごめんだった。
「あなたの敬愛する先輩がゾンビ化して街を徘徊していたので、何とか人間に戻すためにオムライスの店に連れて行きます。的な感じで伝えて」
「伝えるか!!」
ゾンビいじりが気に入ったらしい同僚を無視して、彼はメッセージアプリで後輩にメッセージを送る。