秋の月は日々戯れに
しばらくすると、後輩から怒涛の勢いで返信が送られてきた。
一つ読み終わる前にまた新しいのが送られてきて、鳴り止まない受信音に辟易している彼を、同僚が笑う。
「笑い事じゃないからな。大体、誰のせいでこんな」
「たっくん、なんだって?」
同僚は、彼の恨み言などサラッと無視して問いかける。
やや不機嫌そうに表情が歪んだ彼だったが、こいつはこういうやつだと荒ぶる心に言い聞かせ、後輩からのメッセージ内容を伝えた。
「もしかして、怒るかなって思ったけど……そっか、羨ましがってただけか」
どこか嬉しそうに呟いた同僚は、何かを思い出したように唐突にクスッと笑う。
「愛美ちゃんとランチに行った時も、羨ましがってたんでしょ?愛美ちゃんがわざわざメッセージ飛ばして教えてくれた」
そう言ってしばらくクスクス笑っていた同僚は、思い出したように止めていた足を動かす。
それに続いて、彼もスマートフォンをポケットにしまって歩き出した。
「あんたのゾンビ化については、何も言ってなかった?」
どんだけゾンビを引っ張るつもりなんだと思いながら、後輩から送られてきた怒涛のメッセージを思い返す。
「言ってないこともなかった。“ゾンビ”とは一言も言ってなかったけど」