秋の月は日々戯れに

前半はほとんど羨ましいという気持ちを伝えるメッセージだったけれど、後半は彼が食事を取ることを喜んでいるような内容だった。


「自分もその店に行ったことがあるはずだって、オススメのオムライスの写真が送られてきた」


見せようかとも思ったが、ポケットに手を入れた時点で、同僚は覚えがあるように頷いた。


「たっくんってば、何回行ってもいつも同じものしか頼まないんだよね。他のも美味しいよって勧めても”これが一番好きなんだ”って」


その時のことを思い出しているのか、同僚が幸せそうに頬を緩める。

それを黙って眺めていると、唐突に同僚がバシっと彼の二の腕を叩いた。


「こんなに周りに心配かけて、あんたはいったいどういうつもりよ」

「……今の流れでなぜそうなる」


痛む二の腕をさすりながら彼が呟くと、同僚は構うことなく続ける。


「とにかく、あんたはちゃんとご飯食べて、しっかり寝ること!でないと、ほんとのほんとにゾンビになっちゃうからね」


「いや、ならないだろ……」と呆れた様子の彼の前で足を止めた同僚は、ビシッと自分の真横を指差した。


「というわけで、美味しいオムライスのお店に到着です」



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