秋の月は日々戯れに
心からの呟きに、同僚が驚き顔を笑い顔に変えて続ける。
「だってさ、飲み会とか全然参加しないじゃん。上司とか先輩達の誘いでも、三回に一回くらいしか付き合わないような奴が、まさかあたしの誘いに速攻で乗ってくるとは思わないでしょ」
その言い方だと、とんでもなく失礼な奴みたいではないかと思ったが、考えてみたら言われていることはほぼ事実なので、言い返すこともできない。
基本的に、大人数でわいわいやるよりも、一人でのんびり飲むほうが好きなのだ。
「それは、断ったほうが良かったってことか?」
万が一の社交辞令だった場合を考えて一応聞いてみたら、同僚がなんの前触れもなく力強く彼の背中を叩いた。
バシっとかなりいい音がして、近くにいた数人が何事かと振り返る。
「そう言う意味じゃないでしょ!ほんともう、これだから真面目男は」
やれやれとでも言いたげな顔の同僚と、背中の痛みに顔を歪める彼を見て、集まっていた視線は納得したように散っていく。
まだ休憩時間でもなんでもない仕事中だというのに、可笑しそうに笑う同僚の声はかなり大きい。
ここに上司がいないことが唯一の救いだ。
でなきゃ二人揃って呼び出しをくらって、こっぴどく叱られている。