秋の月は日々戯れに

既に確信しているような同僚は、彼の否定の言葉など気にもとめない。


「まあ、あんだけラブラブイチャイチャしておきながら、結婚なんてしてないとかふざけたこと言ってるから、あっきーに愛想つかされるんだよ」

「愛想をつかされたわけじゃないし、ラブラブもイチャイチャもした覚えはない!」


「はい、はい」とまるで信じていない口ぶりの同僚の前に、早速オムライスが運ばれてくる。

間髪いれずに彼の前にも、湯気を立てる皿が置かれた。


「いただきまーす」


最後まで言い終わる前に、スプーンがオムライスに突き立てられる。

ふわふわとろとろの玉子に、たっぷりのデミグラスソースと、ごろっとチキンの入ったケチャップライスを、同僚は一緒にスプーンにのせて口に入れた。

次の瞬間、表情がふにゃっと崩れる。


「美味しすぎる!」


思わず「大げさな」と呟いたら、同僚が一転して表情を険しくして彼を睨んだ。


「あんたね、そういうことは食べてから言いなさいよ。ビックリして心臓止まっても知らないから」

「止まるわけあるか」
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