秋の月は日々戯れに
冬は日が落ちるのが早くて、あっという間に暗くなる。
オムライスの店の前で同僚と別れた彼は、スーパーの買い物袋を手に、ぼんやりと家に向かって歩いていた。
今日は一日中陽が出ていたおかげで、積もった雪が幾分カサを減らしている。
人通りや車通りが多い道なんかは、薄らとアスファルトが見えているところもあった。
けれど彼が今歩いている道は、まだしっかりと雪が残っていて白い。
一歩一歩踏みしめるようにゆっくりと、彼は歩いていく。
ふと空を見上げれば、ほっそりとしたシルエットの月が浮かんでいた。
見上げていた視線を下ろすと、遠くの方に見慣れたコンビニの明かりが見えてくる。
それを過ぎれば、彼女と出会った公園に辿り着く。
家はもうすぐそこで、いつの間にかここまで来ていたのかと、彼は少し驚いた。
考え事をしながら歩いていたら、自然と距離が伸びたのだと言う同僚の発言にも、今ならば同意を示すことができる。
確かにぼんやりと歩いていれば、どこまでもどこまでも行ってしまうだろう。
目的もなく歩いていたなら尚更に――。
雪かきのされた道が公園の外側についていたので、彼は園内を通って近道せず、誰かが作ってくれた道に沿って外側をぐるりと回る。
昼間に溶けた雪が凍っているかもしれないので、足元に注意しながら歩いていると、ふと視界の端に不自然な雪の塊が映った。
公園の入口、まるで番人か何かのように、そこに佇む巨大な雪だるま。