秋の月は日々戯れに
幼い頃から一緒にいる後輩ならば、知られたくないこともたくさん知られていそうだ。
特に幼少期や中学生の頃なんかは、知られたくない事のオンパレードだろう。
「まあでも、あいつは頼りになりますよ」
いかにも渋々といった様子で、後輩が言う。
「年下のくせに生意気で口煩くって、あと怒ると怖いっすけどね」
認めてはいるけれど、素直に褒めるのはどうにもしゃくなようだった。
「……先輩、これ絶対愛美に言わないでくださいね。前半聞かれたら得意げに威張られるし、後半聞かれたら確実に殴られるんで」
「善処するよ」
受付嬢は、虫も殺さなそうな顔をして怒ると手が出るのか――などと至極どうでもいいことを考えながら、彼は答える。
人は見かけによらないのだということは分かっているつもりだが、それでもやっぱり想像はできない。
「……先輩、なんかどうにもスッキリしないので、家に着くまでさやかちゃんのいいところ言ってもいいっすか」
受付嬢を褒めてしまったことが余程不本意であるらしく、後輩が突然そんなことを言い出す。