秋の月は日々戯れに
そして、未だカップを持ってぼうっとしている彼を、ワクワクした顔で見やった。
その何かを期待するような眼差しに負けて、彼はため息混じりにカップをテーブルに置く。
「言っとくが、俺は最後にテレビゲームをしたのは高校生の時で、それ以降は一切やってないからな」
実際には高校生の時だって、たまに友達の家でやる程度で、家にはゲーム機なんてそもそもなかったのだが、そんなことを知るよしもない後輩は「先輩ならブランクがあったっていけますよ!」と変な期待を寄せている。
「最初は、病院?みたいな、研究所みたいな、とにかくなんかの施設内から始まるんすけど、オレまだそこから抜け出せてないんすよね。そこは割りと序盤に建物の裏から二人、あと終盤に屋根の上から一人降ってくるんで、ゾンビと間違えないように気をつけてください」
「……それ、最初に言ったらダメなやつだろ」
神妙な顔でネタバレする後輩に、彼は呆れたように言い返す。
しかし後輩は、神妙な顔のままで首を横に振った。
「分かってても攻撃しちゃうんすよ。あいつら助けて欲しいくせに、なぜかゾンビっぽい感じで出てくるんで。もう条件反射でいっちゃうんすよ」