秋の月は日々戯れに

後輩の説明に「へー」などと気のない返事をしながら、彼は協力プレイでゲームをスタートさせる。

始まって数分後、後輩の神妙な顔での説明の意味を思い知り、彼もまたそのゲームに苦戦を強いられることとなった。

最初の施設から抜け出すだけでもう数え切れないほどゲームオーバーになり、そうなるともう半ば意地になってコントローラーを握り締める。


「なんだあれ!なんでゾンビの大群の中に紛れてるんだよ。見つけられるか!!」

「先輩、オレそろそろ肉じゃがあっためてくるんで……」

「俺一人でここを抜けろってか!?無理に決まってるだろ!せめてセーブポイントまで待て」


白熱する彼をチラリと横目で見やって、後輩は人知れず嬉しそうに笑った。

最近元気のなかった彼が、楽しそうにゲームに興じている。

まあ本当に楽しんでいるのかどうかはさておいても、沈んだ表情はしていない。

それが後輩には、とても嬉しかった。

本来の目的である肉じゃがの味見、その裏に隠していた“先輩にちゃんとご飯を食べてもらおう計画!”を忘れてしまうほどに。


「あっ、先輩!そこ、そこ右から来ますよ」

「右って……ああっと、これか!」

「先輩!!それ違う。それゾンビっす!」





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