秋の月は日々戯れに
結果的に言って、後輩の肉じゃがは普通に美味しかった。
つい最近まで、インスタントラーメンしか作ったことがなかっただなんて信じられないくらいに。
それを伝えると、後輩は大変嬉しそうに笑って、それはもう全身で喜びをあらわにして、下の階から苦情が来るのではと彼が心配するほどに歓喜した。
肉じゃがと白いご飯に味噌汁というシンプルな夕食を二人で囲んだあと、再びゲームに興じて、食後のコーヒーを飲み終わったところで、彼は帰り支度を整えた。
「送っていきます!」と意気込む後輩をやんわりと断って、彼は「明日遅刻するなよ」と笑ってマンションをあとにする。
夜道をのんびりと歩きながら、ついつい考えてしまうのは彼女のこと。
コンビニの前を通り、公園の外側を回って、雪だるまの番人に見送られながら階段をのぼる。
鍵を開けて家に入ると、当然のように中は真っ暗だった。
ついでに、とても寒々としている。
後輩の家は、外からでもスイッチが入れられる遠隔操作可能なエアコンを使っていたので、部屋に入るとすでにとても温かかったが、彼のアパートにそんなハイテク機能を備えたエアコンがあるはずもない。