秋の月は日々戯れに

なので部屋に入って電気をつけ、それからエアコンのスイッチを入れる。

次に風呂場に向かって、お風呂を沸かした。

沸くのを待っている間に、部屋に戻って上着を脱ぎ、着替えを用意する。

今までは当たり前のように用意されていた着替えを自分で出し、風呂も当然彼が沸かす。

彼女がいないという事実を、こんな些細な瞬間にも実感させられながら、彼はひたすら風呂が沸くのを待った。

手持ち無沙汰すぎてとりあえずコーヒーを飲もうかと思ったが、後輩の家で飲んできたばかりだったことを思い出して止める。

コーヒーの飲みすぎはよくないのだと、いつだったか彼女も言っていた。

そうなると結局、暇を潰す方法は一つしか思いつかなくて、彼はテレビをつけて見るともなしにチャンネルを変えていく。

もう後半に差し掛かったクイズ番組、次回への期待感を煽っている恋愛ドラマ、司会者が締めに入っているバラエティ――色々回した挙句に、彼は明日の天気予報を伝えていたニュース番組にチャンネルを落ち着けた。

後輩の言っていた通り、どうやらしばらく雪が続くらしい。
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