秋の月は日々戯れに

パタパタと自分のデスクに駆けて行って、財布を手に戻ってきた後輩は「ちょっとコンビニ行ってきます!」と宣言する。


「先輩は、何食べますか?」


何か欲しいものはあるかではなく、彼が昼食を用意していないこと前提で問いかけてくる後輩に、思わず苦笑する。


「今日は、あるから大丈夫だ」


同僚から朝に貰ったパンを鞄から出して見せると、後輩の表情が予想以上に輝いた。


「先輩も、そこのパン屋行くんすか?それ、新作の焦がしキャラメルクリームパンっすよね!」


確か同僚がそんなような商品名を口にしていたのを思い出し、彼は答える。


「そんな名前のパンだったと思うが、行ったことはない。これは貰ったんだ。有名な店なのか?」


「んー、どうっすかね」と曖昧な返事の後輩。


「さやかちゃんがそこのパン屋凄く好きで、オレも教えて貰ってから行くようになったんすよ。最近はキャラメルフェアーでもやってるのか、やたらとキャラメル味の商品が多いんすよね。まあ、美味しいからいいんすけど」


そう言った後輩は、ハッと何かを思いついたように表情を変えて


「それじゃあ先輩、オレ、何かパンに合いそうな飲み物買ってきます!やっぱりパンには、コーヒー的なものがいいっすかね?」
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