秋の月は日々戯れに
「いつも拓がお世話になっていますし、私だって先輩さんにはお世話になりました」
後輩の場合は、彼が世話を焼いているというより、後輩の方が彼にまとわりついているというのが正しいのだが、きっと受付嬢も、そんなことは百も承知だろう。
承知の上で、いつもお世話になっているお礼にと、受付嬢はレトルトカレーの箱を手渡す。
彼に気負わせないように、なんだかんだと理由をつけては、色んな物を持ってきてくれた今までと同じように――。
「一箱に、甘口と中辛と辛口と、三種類入っているんです。甘口はナンと食べるのがオススメで、中辛はご飯と、辛口はたっぷりチーズをかけてカレードリアにすると美味しいそうです」
「ナンを家に常備してる人なんているのか?」と苦笑気味に聞いたら、受付嬢も困ったように笑って
「私も店長さんにそう言ったんですけどね。そしたら、ナンも別売りで置いてあるから、是非買いに来て常備してくれって言われてしまいました」
営業努力たくましい店長の言葉にまた苦笑して「それじゃあ甘口のカレーを食べるときは、ナンを買いに行くよ」と彼は返す。