秋の月は日々戯れに
「そうしていただけると、店長さんも喜びます」
受付嬢は笑いながらそう言って、それから唐突に口を閉じて視線を泳がせる。
なにかまだ言いたいことがありそうなその様子に彼が首を傾げると、受付嬢は意を決したように「あの……」と口を開いた。
「……け、喧嘩って、悪いことばかりではないと思います!」
「……ん?」
「“雨降って地固まる”ということわざもあるくらいですし、喧嘩を経て、お互いにより分かり合うということもあります。それもまた、長い人生を共に歩んでいく者同士、大切なことなのではないかと!」
突然何を言い出すのかと思ったら、受付嬢は何やら必死になって喧嘩の必要性を説いている。
「そ、それでも、あまり長引かせるのは流石に、のちのちの関係に響くかと思われますので、程よいところでお互いに歩み寄る、の、が……最適、かと……」
不思議そうな顔をしている彼にようやく気がついた受付嬢は、ハッとしたように言葉を途切れさせ、今度は何やらあわあわと慌て始める。