秋の月は日々戯れに
「えっと!あっ、すみません!!私、部外者の分際で、分かりきったようなことをつらつらと……。さ、差し出がましくて本当に申し訳ありません!」
無言の彼を怒っていると勘違いしたのか、受付嬢は何度も何度も深々と頭を下げる。
「あっ、いやそんな。別に差し出がましいとか思ってないから……」
突然喧嘩の話をされて何のことか分からなかった彼だが、冷静に考えてみれば想像はつく。
同僚も後輩もそうだったのだ、受付嬢だって、同じような勘違いをしていても不思議ではない。
「ありがとう。いつか喧嘩したとき、そのアドバイスを参考にさせてもらうよ」
今度は受付嬢が不思議そうな顔をして「えっと……今現在、奥様と喧嘩されている訳では……?」と尋ねる。
「まあ、喧嘩以外にも色々あるんだ。あの人は特に、マイペースな人だから」
本当は“自分勝手な人”だと言ってやりたいところだが、そこはグッと堪えて“マイペース”と言っておく。
あまり言い過ぎると、止まらなくなりそうだった。
「そうでしたか。それは勝手な勘違いをしてしまってすみません」