秋の月は日々戯れに

もう一度ぺこりと頭を下げた受付嬢は、どこかホッとしたように笑う。


「拓やさやかさんから、最近先輩さんに元気がないのは、奥様と喧嘩しているのが原因だと聞きまして。微力ながら、なにか力になれればと」


余計なお世話ですよねと自嘲気味に笑う受付嬢に、彼は「そんなことない」と笑顔を返す。


「いつも色々持ってきてくれただろ。自分じゃ買わないようなものばっかりだったから、新鮮だったし、嬉しかったよ。特に入浴剤。あれは香りもいいし、凄くリラックス出来て良かった」


途端に、受付嬢の顔がぱあっと華やぐ。

その顔は、喜びでいっぱいになっている時の後輩にどこか似ていた。


「今度また、入浴剤をお持ちします!」

「いいよ、そんな気を使わなくて。貰いっぱなしじゃあ、そろそろ気持ちが落ち着かない」


苦笑する彼に「先輩さんこそ、気を使わないで遠慮なく貰ってください!」と受付嬢は返す。

どうしたものかと頭をかいて笑う彼に、受付嬢もまたにっこりと笑った。


「あっ、そうだ!拓の前途を祝す会、皆さんに色々意見を聞いて回った結果、おでんのお店に決まりましたのでご報告を」
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