秋の月は日々戯れに
始まりはとある冬の日
久しぶりに足を踏み入れた公園は、やっぱり不気味な静けさに満ちていた。
闇に沈んだ遊具がその不気味さに拍車をかけ、園内に一つだけ灯った外灯が、その下にあるベンチだけを明るく照らして、その周りの闇を更に深めている。
そんな場所に、当たり前のように彼女はいた。
人気のないその場所でたった一人、滑り台の上に膝を抱えて座り込み、空を見上げていた。
闇にぼんやりと浮かび上がる白いワンピースは、足元に近づくにつれて色を失っていき、そこからスラリと伸びた足は既に向こう側が透けてしまっている。
反対に上半身はしっかりと色を保っているけれど、フリルがかった袖口から伸びる腕は、着ているワンピースと同じくらい白い。
相変わらず年齢が判別しづらい顔は、年下のようにも年上のようにも見える。
空を見上げる彼女の表情は、彼の位置からでは確認できないけれど、膝を抱えて丸くなっている姿は、なんだかとても寂しそうに見えた。
「そんなところで、何してるんですか」
第一声は、呆れたため息混じり。
今日だけここに居るのか、それとも彼の家を出てからずっとここに居たのかは知らないが、案外近くにいた事に拍子抜けしてしまった。